この度の「平和学習」を教育基本法違反とした文科省の対応に係る抗議と声明
この度の「平和学習」を教育基本法違反とした文科省の対応に係る抗議と声明
2026年6月5日
広島県教職員組合
2026年3月16日、同志社国際高等学校の生徒らを乗せた「平和丸」と「不屈」の2隻が辺野古沖で転覆し、高校生1人と船長が亡くなり、14人が重軽傷を負った。今回の転覆事故は極めて痛ましい事故であり、校外の教育活動における安全管理上の問題として、再発防止にむけた検証が不可欠である。
一方、松本洋平文科相は、5月22日の記者会見において、この度の事故に関わり、安全管理上の問題だけでなく、米軍普天間基地の辺野古への移設工事に関する同校の教育内容が、「政治的活動の禁止」を定めた教育基本法第14条第2項に違反するとの考えを示した。その理由について、松本文科相は、「(辺野古移設工事を学習する際、)生徒の考えが深まるような様々な見解を十分に提示していなかったことなどを総合的に勘案した」と説明した。
しかし、今回の辺野古沖での平和学習は、教育基本法第14条第2項が禁じる「特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他の政治的活動」と断じることができるのだろうか。同校が行った平和学習は、軍事基地問題が生起している現場を実際に見て考える学習場面を設定していた。その考え方は、一般的に社会事象を学ぶうえで極めて重要な姿勢であり、現に生起している社会問題に主体的に向き合うことをめざした学習であると言える。それは、同条第1項で教育上尊重されなければならないとする「政治的教養」つまり、「政治のしくみを理解し、社会問題に主体的に向き合い、市民として判断する力」を育むものである。
教育基本法は、日本国憲法と同様に戦前の軍国主義教育の反省を踏まえて定められた。その根幹は、教育への不当な支配の禁止である。同校の辺野古での学習が国の考えや政策に反するという理由で、同法第14条第2項に違反すると断じた文科省の判断やこの間の動きは、かつて、国策に反対する者を「非国民」とし、教育によって子どもたちを「お国のために」と戦場に駆り立てたことと重なる。それは、教育への不当な支配を禁じた教育基本法第16条に反するものに他ならない。
戦前の教育を経験した広教組の先達は、戦後一貫して「教育は自由であらねばならない」ことを訴えてきた。教育基本法第1条には、「人格の完成」をめざし、「平和的で民主的な社会の形成者」を育てることが、教育の目標とされている。学校教育において、もっとも重要なことは、平和で民主的な社会を追求することである。平和の問題は、その時々の国際情勢や政権の政策に左右されやすいからこそ、個々の教職員の主体性に基づいた教育内容を創造することが必要である。
広教組は、この度の文科省の判断・対応が不当なものであることに対し強く抗議するとともに、それらが、教職員が平和の問題を教育課題として実践することに大きな影響を与えかねないことを懸念する。
今後も、広教組は日本国憲法及び教育基本法がめざす「平和で民主的な社会」の実現にむけ、個々の教職員の主体性と良心に基づき、子どもたちの最善の利益を追求する教育内容の創造にとりくむ決意である。

